ハルク

『あほくさ』

床に落とした鞄を拾って、鞄についた土埃を手で払う。

安美に押された右肩。片手でそっと触れる。

『痛…い』

『あほくさいのは誰だ…』

涙が込み上げそうになって、眉をしかめた。

涙は出ない。

左の肩に鞄を掛け直して私は歩き出した。
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