ハルク
初めてきた町は想像以上の活気だった。
駅前にはデパートや百貨店が立ち並び、たくさんの人が行き交う。
私の住んでいる町も寂れているわけじゃないけど、この町の華やかさには足元にも及ばない。
ロータリーに咲いている花も心なしか鮮やかだ。
その花の前で携帯をいじっている男の人も、灰色のパーカーにジーンズを合わせているだけなのにこなれて見えた。
駅の前を通る高校生たちも、普通の制服を着ておしゃべりして歩いているだけで、地元の同級生たちが急に田舎くさく思えてくる。
背中がスッと伸びたスタイルのいいお姉さんが長い髪の毛をなびかせて私の前を通りすぎる。
着ている服や、靴、歩き方まで洗練されていて、私にはこの町の華やかさと釣り合わないと思った。
視線を落として自分の姿を見た。
足元は、お気に入りの膝下丈のブーツにデニムのスカート。上は適当に合わせたロンT。フードの付いたダウンを羽織っている。
惨めに思えてきて首を振った。
それで、ちょうどいい。
これから私は汚れにいくんだ。