ハルク
そう考えたら可笑しくなってきた。フッと肩の緊張が解けて軽くなった。

恐がる必要はない。
そういう仕組みになっているだけ。私はそれに乗っかっているだけなんだ。


手元のスマートフォンの地図が示すには、今歩いている道の先にあるコンビニを右に曲がると、商店街に出れるらしい。
遠くに「あさひ商店街」と書かれている大きな看板が見えた。目指す商店街の名前なんだろう。
そこは長いアーケード街になっていて、商店街の一番端にパチンコの店はある、そうだ。安美がそう言っていた。
待ち合わせはそのパチンコ屋の裏だ。

待ち合わせまであと25分か…

待受画面で時間を確認したら、35分の5の数字が6に変わる瞬間だった。

待ち合わせまであと24分。ポケットにスマートフォンをしまってコンビニ目指して歩き始めた。

学校が終わる時間と重なったみたいで、制服を着た高校生と次々とすれ違う。
走って駅に向かう坊主の男の子。異性と手を繋ぎあって歩く二人。横に広がって道を塞ぐギャル軍団。

私にはそれが異世界に思えた。

私とはこれから一生交わることはない。きっとこれからも、出会ってはすれ違っていく。
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