ハルク

あさひ商店街は立派だった。
道幅は狭いけど、タイル張りの床にアーケードの屋根は見上げるほど高い。

夕飯前の時間だから、買い物客で商店街は賑わっていた。

ベルを鳴らして向かってくる自転車にイライラしながらも、ずんずん歩いた。

八百屋に漬物屋さん、着物屋…昔からやっているお店に、若い人が好きそうなおしゃれなお店もあった。

アーケードの終わりが見えて来てその下にパチンコ店の店名が光っている。
『パンドラ』と、丁寧に、赤と青のライトに縁取られてチカチカ光っている。

あれか…

カウントダウンがいきなり始まってしまって、胸がドクンと鳴った。

私、緊張してる…

でも、ここで足を止めるのはカッコ悪くて、逆に歩く速度は速くなった。

あの看板の下を曲がればゴール。
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