ハルク


手前のアクセサリーショップの前をすぐに通り過ぎてやかましい音が響く。パチンコ屋の入口を、耳を塞ぐよう、下を向いて通った。

さっき見た派手な看板の下を通って角を右に曲がる。

パチンコ屋の横を入った路地裏は両面に自動販売機が置いてあって、店側の壁の前が自転車置場になっていた。

自転車置場の前の道は、道に自転車がはみ出していて横幅が40センチくらいしたない。
自転車一台が通るのも、やっとの『隙間』だ。前から歩いて来る人がいたら、通り終わるのを待つしかない。
前から人がやって来る気配が無いのを確認してから、道を進む。

自転車にスカートが触れそうになるので、慎重に右下の裾を気にしながら歩く。

右肩に掛けた大きな袋が邪魔だった。
左肩に紙袋を掛け直して、足早に自転車置場の前を過ぎた。

自動販売機に袋の角がぶつかっても気にしない。この道を速く通りすぎることだけ考えた。私には、ゴールしか見えていなかった。
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