杞憂きゆう〜ムダなことなどひとつもないね〜短編集
もうひとつ右に曲がったら
私たちの家
この空気から早く開放されたかったから
誰よりも早くドアを開けた。
「 ありがとうございました。 」
ポツリと伝えドアを閉めた。
「 藤也、
車とめたら家に入ってきていいからね。 」
姉の声と
ドアの閉まる音を背中に聞いていた。
車がちょっと遠くなったときに
「 ねっ!
舞優!!
体調でも悪いの?
スゴく不機嫌な顔して!
私の妹なんだから
かわいくしててよ!
私の立場も
私の妹でしょ?
少しは考えなさいよね!
舞優、
あんたのせいで
藤也とダメになったら
一生恨むからね! 」
私は小さく頷くだけで
何も言えなかった。
いや、言わなかった。
ちがうな
今の姉に言える言葉が
何もみつからなかっただけかもしれない。
2階まで
姉と彼氏さんとママの声が届いている。
楽しそうな声たちが…
私は音を出さないように
1階のキッチンへと階段を降りている
「 ちょっとトイレ…。 」
彼氏さんの声が聞こえた。
逃げるとしても
時すでに遅し
階段下のトイレ前にて会ってしまった。
「 どうぞ…。 」
声も控えめに
トイレを手で知らせた。
自分の姿が
かなりマヌケな感じがしていたけど
これは仕方ない。