ヴァイオレンス・フィジカリズム
「変わった事を聞くなぁ」
「だって、面白そうだったから。」
「……勿論可能だけれど。」

戸惑いを隠せないまま、おずおずと浅く、男は頭を縦に振った。

確かに振った、のだ。

「でもまだ、発狂のメカニズムと回避策は研究中なんだ。カウンセリングや向精神薬で回避できるのか、若しくは遺伝子操作のレベルで改編が必要なのかとかね。」

たった1%でも一時であっても、友姫ちゃんがそんな風に狂っちゃうのは僕は悲しいよ。

そんな甘ったれた事を言ってくる男に僕は、そうですねぇごめんなさいと曖昧にだけ笑って見せる。

実際、頭の中は今の男の話で一杯だった。


気持ち悪い男が返った後、そいつの名刺をもう一度見返した。
名刺を見るにあの男、本当に遺伝子操作の研究室に勤務しているらしい。

言葉や態度の端々からにじんではいたが、正真正銘の科学オタクって事だ。

書かれている会社の名前は、僕でも聞いた事あるような製薬や医療機器メーカーの大企業、『H-association』の付属研究室の名前だ。
男は斎藤一明というらしい。

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表紙・目次

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