ヴァイオレンス・フィジカリズム
何時もは速攻で捨てる筈のそれを、今時レトロなシステム手帳に大事に仕舞い込んだ。

遺伝子操作での性転換。

必ずそれを受けると決めたからだ。

気が狂おうと、死のうが構わない。どうせ未来のない人生だ。
目標ができれば途端に、胸の奥が熱くなって世界が輝くから不思議だ。

あの気持ちの悪い男――斎藤には感謝しなければ。

そんな事を考えながら、コスチュームのレトロ・ゴシックの服を脱ぎ捨てる。
本当はあんな奴にさわられた衣装等、焼き捨ててしまいたかったがこれでこの服は結構値が張るのだ。

クリーニングに出して念入りにシャワーを浴びる事で我慢するしか無いだろ。

全裸になってシャワールームへ脚を踏み入れる。
猫脚の浴槽のある、ゴシックな作りのバスルーム。
無駄に豪奢な鏡に映る僕の身体を見て、足を止める。

昔から僕の取り柄は外見しかなかった。
何時まで経っても白く細く、二次性徴らしい二次性徴をしていないユニセックスな身体、それから女みたいな…否、女より綺麗な作り物の様な顔。
白金色の柔らかい髪に、深いグリーンの瞳。

完璧な“少年”の姿。

繰り返すが僕にあるのはこの見た目だけだ。
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