ヴァイオレンス・フィジカリズム
――僕は。

無機質でいる方が楽だった。

プライドが高いから回りにあわせることが苦手だったのは昔から。
中学の時(まだ学校に通っていた頃だ)いじめって奴にあっていて、その頃に自分と外界を切り離す事を身に付けた。
中学を卒業したその日、学校という閉鎖空間から脱出してみれば、その特技は随分と役に立ったものだ。

ぼんやりと考えながら、鏡に映る自分の身体の輪郭を人差し指でなぞる。

この身体が少女のものになる。

貧相な男のものから、美しい少女に孵化するのだ。
僕が女になったら、僕は僕を愛で、僕を抱く。

一人で居ることに躊躇いを無くす、これ以上の理由があるだろうか。


陶酔する位甘美な妄想に、僕はすっかり嬉しくなった。

薄い唇が弧を描き、鏡の中、微笑む美しい少女に僕は口吻を、した。





ゆっくりと風呂に入って、男に付けられた穢れを落としたあと、黒いTシャツにジーンズというシンプルな格好に着替える。

仕事でゴシックな衣服を着てはいるが、実際普段はこんなものだ。
生まれついての貧乏人なのだ、仕方ない。

スポーツドリンクのボトルに口をつけながら、その足でオーナールームへ向かう。
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