昔みたいに 抱きしめて?
部屋に入ると、ケータイが鳴り出した。

さっきまできていた友達ではなかった。

翔からメールだ。


『チョコケーキ美味かった

ありがとう

ところで、これって全部手作り?

めちゃくちゃ好みの味なんだけど』





『うん』


そう返すのが精一杯なくらい、私はドキドキが収まらなかった。

ベッドに倒れこみ、そこに置いてあるぬいぐるみに顔を埋めバタバタとした。

そのぬいぐるみは、以前翔から貰った物だった。




翔からメールがまた来た。


『お返し、今年は何がいい?』


翔はよくこうして聞いてくれる。

特にないって返すと、私の好きそうな物を選んでくれるからあまりねだらないけれど。




『昔みたいに抱きしめてほしいな。』


なんて打ちかけてハッとした。

私、ほんとにどうしちゃったんだろうか。

しょうがないのでとりあえず翔への返信は置いといて、友達との遊ぶ約束のメールを続けた。




そのまま返信を忘れて翔に拗ねられることになるとは、今の私には分からなかった。
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