カゼヒキサン。
「離せバカ!!」

腕を振り払う。

「瑞希!」

必死で階段を駆け降りた。

はぁ はぁ はぁ はぁ

息が切れる。

逃げたい。

消えたい。



「みっ…ずき!!」

人気のない中庭まで走った。

追いかけてきた海斗に腕を掴まれる。

「なんで泣いてんだよ…。」

「し、知らない!」

苦しさに流れた涙をふく。

やめて。

そんな目でみないで。

もう二度と元に戻れないなら

戻らない方がましでしょ…?

そんなんも分かんないのバカ。

「瑞希…ごめん。」

「な、何が…。」

背を向ける。

涙がこぼれる。

「あ、あんな…最低なキスして…。」

最低なキス。

またランクさげてやがんの。

「なんで謝るの?」

「え?」

「海斗にとってはあんなキス、ただの軽いキスでしょ?なにいちいち重くしてんの?なんでもないキスだったんでしょ?だったら謝んなって話だよ。」

「ち、違…。」

「もう何聞いても耳が腐りそうだよ。…もうあたしに関わんないで。」

最後は耐えられなかった。

とりあえず走った。

涙はポロポロ流れてた。


なんでいちいち謝るの?

軽い気持ちなら軽い気持ちで通してよ。

…よくわかんなくなるじゃん。


ほら…

まだ意味のあったキスだと期待してる。

まだ想いのこもったキスだと期待してる。

まだ海斗が好きって思ってる。

また唇が熱くなってる。

また心臓が高鳴ってる。


「苦しめんな、バカ。」


教室に戻る。

らんちゃんとさっぴにはびっくりされる。

「ちょ、なんでそんなに目真っ赤なの!?」

「…なんでトイレ行っただけでこんなに時間かかって、さらに泣いてんだよ。」

「……らんちゃぁ~ん…さっぴぃ~…。」


結局は二人に泣きついた。
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