カゼヒキサン。
オーバー

オーバー

アンダー

オーバー

オーバー

アンダー


ふ、ふ、ふぅ、ふ…


「瑞希、そんなにまだ運動してないぞ?」

「べ、別にへーきだよ…。」

「汗びっしょじゃんけ~。」

タオルをとってきて、顔を拭いてくれる。

「うーん…でも大丈夫だよ。元気、元気っ!」

ニコッと笑うとらんちゃんは「そう?」と心配ありげな顔をして、また少し離れて、あたしに優しくボールを出す。

オーバー、オーバー、アンダー。

オーバー、オーバー、アンダー。


「9,9でやってみるよー。」

先生がピーッと笛を吹いて、女子18人はテキトーに9,9に別れる。

9対9ってまだ全然わっかんね。

「大丈夫か~、瑞希。」

「うん。大丈夫、できるよ。」

「そう?」

「あたしいないと人数関係めんどくなるでしょ?いいのいいの。できるできる!」

「きつくなったら言うんだよ?」

「分かってるって!」


ごめん、けっこうきついかも。


ピーッッ

先生の笛で始まるバレー。

よくわかんないまま進んでいく。

ふらり、ふらり…

足元ふらつきつつも、頑張る。


「海斗、パスッッ!」

ふいに男子側の声が聞こえる。

キュッ、キュッ

男子はバスケだ。

海斗は運動神経抜群のため、体育で活躍する。

小柄ながらも、その身軽さでするすると抜け、

バシュッッ

「ナイッシュー!」

投げたボールが、ネットを抜けた。

…上手いなぁ…。


ってバカバカバカバカ。

もうダメだよ。

あたし達はもうきっと戻れないんだよ。

ダメ………



「瑞希!!!」

我にかえる。

そうだあたしバレーの最中……


頭に大きい衝撃を受ける。

くらくらする程度じゃない。

意識が消える。

脳内が真っ白になる。



……ドサッ

耳が微かに、あたしが倒れる音が聞こえた。


「瑞希、瑞希!!!」
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