スイッチ!
次の一歩……その次の一歩……それが、崖を踏み外すかもしれない恐怖──




死にたいと言った彩火であっても、それは否応なしに襲いかかっていた。





六歩目……後ろ足で蹴った小石が崖の斜面を転がり落ちる音がする。





「…………っ!」




眞幸は、それを聴きながら、何かに必死に耐える様に歯をくいしばって、ジッと前を向いていた。





最後の七歩目……それを彩火が後ろに出す……




そして……




前足にあった自らの体重を……ゆっくりと後ろ足に、かけようとする。






(あっ…………!)





堕ちる──言葉にも出来ない刹那の瞬間に、彩火はそれを確信していた。





「…………いやっ」






彩火は、後ろへ傾いてゆく最中……そう小さく呟くと、眞幸の背中へと右手を伸ばしていた。






届きはしないと、知りつつも……。
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