スイッチ!
歩道橋……その手摺を挟んで暫く二人は黙って向き合っていた。



眞幸は彩火の手をギュッと握っている。



その手を不思議そうに眺める彩火が、疑問を口にする……。



「どうして……私の手を握っているの?」




「どうしてって……危ないから」



眞幸は真っ直ぐに自分を見ている彩火の視線に少し困惑した。




「危なくないから……放して」




「放したら……どうする気?」




「ここから飛ぶの」




「じゃあ放さない……やっぱり危ないから」




「危ないのは、死にたくない人……私は違うから」




「どうして死にたいの?」



「上縞くん、だったよね……あなたに関係ないから」



その言い方が、眞幸をムッとさせた。



「関係ない……じゃあ聞くけど……こんな所で飛び降りたら城田さんは車に轢かれるよね。その車を運転する人……それこそ全く関係ない、その人に城田さんは多大な迷惑をかけることになるよ」




彩火は、顎を手で触れて少し考える仕草をする。



「そうね……その通りだわ」



そして、彩火は手摺を乗り越える。



「これでいい?」




「あ……うん」




「じゃあ、放してくれる……手」
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