女の子は充血している
サヨナラという名前の猫
真っ黒なからだに

金色の目を持つ猫


「どうしてそんなさみしい名前をつけたの?」

と聞いたら

「長いしっぽがゆらゆら揺れるのが、手を振ってるようにみえたから」

と答えた

「苦しめたくなかった」という言葉で

私を苦しめた人


最後はケンカもできなかった


お別れの日にサヨナラは

私の足元にすりよってニャーと小さく鳴いた


ずいぶん前からわかっていたのに

気づかないふりでなんとかなると

なんとかしようともがいた二人を

ずっと見ていた猫


サヨナラという名前の恋をしていた

私とあの人を知っていた猫
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