キスから魔法がとけるまで

直毛でペタンコだった髪が、ミディアムのふんわりとした柔らかなウェーブになり、烏の様な真っ黒が、ナチュラルなブラウンになった。
伸ばしっぱだった前髪も、ちきんと作られている。

「まどかは色白だから、これくらい明るくて丁度イイでしょ?真っ黒だったから、寧ろ色白通り越して蒼白だったし。ていうか、貞子?」


何それ。


私の22年間を全否定された様で、ムッとして思わず唇に力を入れた。けれど何故か、鏡の中の私はそれ程怒っている様には、まるで見えていない。
これが華やかさという名の効果なのかと、初めて知った。

満足げなハルさんと別れると、私達は遅めのランチを近くのイタリアンでとる事にした。

時折感知する周囲からの視線。それに気付いたのか、梨花が声を弾ませ気味に、そっと耳打ちした。

「ねえ、あの店員さんもあんたの事見てたよ?」

「……梨花、絶対楽しんでるでしょ?」

「だって、面白いもん」

「帰る」

「まあまあ、そう怒らないでよ。まどかの世界が広がったって事じゃん。今までとは違う風に景色が見えない?ほら、よく言うじゃん?キラキラ輝いて見えるーって」

恋する乙女か!



< 10 / 34 >

この作品をシェア

pagetop