キスから魔法がとけるまで
「くそ……」
大手ライバル企業が並ぶこの時代、こんな問題で足引っ張られてたまるか。
毒島は、どこかのライバル企業が関与したガセだと思っているようだが、俺にはそうは思えない。
確かに一年程前から、謎の出金が確認されている。それは、全ての最終管理を託されている俺にしか気付かないような巧妙なものだ。
一年前の雇用者リストを片っ端からあらったが、これといって怪しい人物は出て来なかった。しかし、信じたくは無いが間違いなく、うちの人間の仕業なのだろう。
もしかしたら、幹部の者なのか……?
なんにしろ、俺の知らない所で、俺の金が動いているなんて、本当に腹立たしい。
「……一か八か、だな」
ポケットからケータイを探り出すと、俺は毒島にコールをした。
「外へ出て来る。車をまわしてくれ」