キスから魔法がとけるまで


あ~本当、人生一最悪な気分だわ。

いつものリクルートスーツに身を包み、今日も面接に向かう私。

ただ、いつもと違うのは、改革されたヘアーと、土素人が適当に塗りたくった顔。そして、昨晩の悪夢で眠れず、異様に睡眠を要求してくる頭。

その最悪三点をこしらえて、今、人生をかけた50回目の勝負に挑もうとしている。

本当、自分でもビックリだわ。
人生かけすぎて。


それなのに、コンディション史上最悪って。

もう、笑いしか出てこない。

それも、下の下の笑い。


そんな私に、躊躇いなくティッシュを渡してくるチャラい男性。

梨花がしつこくされてるのは、何度も隣で見てたけど、まさかそれと同じ状況が私にもくるとは。

全く、見ればわかるだろ。就活中なんだよ!
それなのに、キャバとかパブの道に走ると思うか?まあ、確かに私は49脱落してますよ。
だけど、こんなムフフ的な場所で誰が働くかってーの!

私は若干苛っとして、スルーした。

「お願い!一つ!ね?お願い!」

いらねーよ。

「一つだから。これ一個」

一つでわかるよ。

「お姉チャンキレイだから、サービスしちゃう。ね?お願い!絶対必要になるから」

しつこい、てか増えてるし。

「だって、鼻水出てるよ?」

「ええ!?」

それを早く言えよ!

私は男から、素早くティッシュをぶんどると、一目散に逃走した。

鼻水を指摘された事が恥ずかしいからではない。

意地でも取るまいと決めたプライドを、一瞬で棄ててしまった自分の羞恥心にだ。





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