キスから魔法がとけるまで
「では、後日改めてご連絡致しますので」
え?これは……!!
「あ、はい!宜しくお願い致します!」
初めて聞いた面接官の台詞に、私は思わず立ち上がり深々と頭を下げた。
このコンディションだし、敗戦記録を更新するとばかり思っていた今回の面接。
神は見捨てなかったのだ。
あんな悪夢を見てからの人生をかけた大勝負に、あたってくだけ散る一人の女の人生を、神は情けをかけたのだ。たぶん。
『真面目で、口も固そうだし、大役を任せられる』とまで、仰っていたし。
これは、絶対決まったでしょ?
しかも、いきなり大役?うふふ。
私は、上機嫌で和花な公園のベンチに腰を下ろすと、清々しく空気を吸い込んだ。
目の前には、大きな池が広がっていて、鴨の親子が仲良く泳いでいる。
まさに、世界が輝いて見えるよ、梨花!
キラキラと眩しいくらいに!
しかも、空気もこんなにキレイ……ゴホゴホ……!!
突然漂う不快な臭いに、思わず現実に引き戻された私は、隣のベンチを睨み付ける。
「あの!喫煙所はあそこですから!」
『ああ、そうなんだよ。負担をかけて悪いが……』
男はケータイで話をしていて、全く気付いていない。
ていうか、話すか吸うかどっちかにしなさいよ!