キスから魔法がとけるまで
こんな男に、ふ、ファーストキスを奪われたなんて。何度唇を消毒しても足りないくらいだ。屈辱過ぎて、思い出しただけで、気分が悪くなってくる。
いや、まてよ?
あれは事故なんだし、キスにはカウントされないんじゃないか?やっぱり、キスとは恋人同士がして、初めて呼べるもんだと思うし。
なんて言うか、愛がないと成立しないよね。
ほら、よく言うじゃない?キスは甘い味がするって。全然甘い味しなかったからね!
だから、あれはキスではない!
だが、酒に酔っての過ちとはいえ、許すまじ行為だ。この男に、詫びて貰う義務が私にはあるはず。
「あの~昨日の事なんですけど……」
「ああ~ソレなんだが、記憶が抜けちゃっててな、全く覚えてないんだ」
は?
「覚えてない!?」
「今朝、聞かされてな。初めて知った。悪かったな。まあ、減るもんじゃねぇし、相手が俺なんて、お前ラッキ……」
「この、クソやろー!」
身体が勝手に動いていた。
男の足をヒールで思いきり踏みつけると、鞄を素早く抱え、悶える男の前から走り出した。
あの男、本物の最低野郎だ!