キスから魔法がとけるまで
『アハハハハ!傑作だわ~!』
親友の、大きな笑いがケータイから漏れると、私は溜め息混じりにベッドに腰を下ろした。
「そこ、笑うとこじゃないんだけど」
面接の報告ついでに、公園での出来事をうかつに話してしまった結果、この大笑いだ。
彼女の、目に涙をうかべながらヒーヒー笑う姿が、透視能力の様に鮮明に見てとれる。
『ああ~ごめんごめん、昨日勝手に帰ろうとした罰よ。凄い剣幕だったもんね、あんた。もう思い出しただけで、笑っちゃう!』
「ちょっと梨花~」
『極めつけに、騒ぎを聞いた警備員に取り押さえられてたしね~!アハハハハ!』
「……その話、墓場まで持って行ってよ?誰かに喋ったら、呪い殺されるから」
『誰に呪われるって?それより、ちゃんと原田サンに御礼行ったの?彼が居なかったら帰して貰えなかったかもなんだからね?』
「ああ~、やっぱそ~なりますよね~」
騒ぎがあったVIPルームから出てきた、怪しい女(私)を、警備員が取り押さえ……
それを、たまたま目撃した刑事の原田悠生が、間に入ってくれたお陰で、女(私)は身柄を解放されたのである。