キスから魔法がとけるまで
ーーーーーーーーーーーーーーーーー……
「どうだね?娘の反応は?」
原田が階段を下りて来た事を、確認するなり、まどかの父、佐伯詠二郎(さえきえいじろう)が、リビングからその姿に問い掛ける。
「駄目ですね……」
原田は、首をうなだれながら、参ったとばかりに、うなじを撫でると、リビングの椅子に力なく腰掛けた。
「まどかちゃんが、宮城秋と接触していたのは事実のようです……が。何も話してくれませんでした」
「そうか」
「どうなさるおつもりですか?」
「……娘が、宮城と面識があるのなら、利用しない手はない」
そう言って、珈琲カップに口を付ける詠二郎に、原田は眉間にシワを刻む険しい顔付きを見せると、思わずガタンと、立ち上がった。
「利用って……課長の娘さんですよ!?巻き込んでしまって、彼女に何かあったらどうするんですか!?……僕は、反対です。何か他に手が……」
「だったら、こんなに捜査が長引く筈はない!いや……君を責めているつもりはない……。だが、全く進展しない現状に、上も苛立ちを隠せないんだよ。もう、手段を選ぶ余裕もない」
「……本当に、それでいいのですか?」
「……ああ。やもえない。それに、君もいる事だしな。娘の事は頼んだよ」
暫しの沈黙の後、そう、詠二郎は呟いた。
「……はい、わかりました」