キスから魔法がとけるまで

程なくして現れた、幹部であろう社員の手には、ここのOLさんが着ているであろう制服。

それを、私の前に差し出すと、思わぬ事を口にした。

「早速で申し訳ないが、これに着替えて着て欲しい」

「今ですか?」

「ええ。これから大事な取引がありまして。君に早速、その取引先との会合に同席して頂きたいんだ。勿論、タダとは言わない」

「でも、私は大学生の素人ですし、そういった大事な会合には、まだ……」

返そうとした制服を、あっさりと押し戻される。

「いや、君にしか頼めない、重要な役だ。わが社の未来がかかっている。どの女性社員も、その荷の重さに首をたてには振ってくれんのでな。どうか、頼む!」

う~~……。

こんな私を初めて認めてくれた、丸山東証。
ここまで幹部の社員が頭を下げるなら、お金も入るんだし、断る事もない……よね。

私は、しぶった結果、何とか自分に納得させるかたちで、承諾をした。

座っていてくれればいいとの事。

私は、更衣室で制服に着替えると、鞄にスーツを押し込み、用意された車で、幹部の社員二人と会合場所に向かった。



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