キスから魔法がとけるまで


「では、まどかさんの顔も見れた事ですし、そろそろおいとましますね」

彼は、ご馳走さまでした、と珈琲カップを静かに置くと、両親に頭を下げコートに袖を通す。

「また、いらしてね」

「早急で悪いが、例の件前向きに検討してみてくれ」

「はい、わかりました。では、まどかちゃんまたね」

「お気をつけて……」


ひらひらと手を振り返し、礼儀正しくドアを閉める姿を見送ると、待ってましたと二階にある自室に駆け込むやいなや、ベッドの布団に滑りこんだ。


「しまった!スーツ……ま、いいや……」




『華がないんだよね』



浴びる程呑んだ筈なのに、睡魔を征していつまでも頭の中にはびこる面接官。
そして、こだまの様に復唱されるあの言葉に、私は頭を抱えうーうーと唸りをあげるしかなかった。






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