キスから魔法がとけるまで



「ちゃんと来たわね」


私の中で歴史的革命が起こるであろう当日。

駅前にいつものスタイルで現れた私を見るなり、梨花は、うんうんと満足げに頷いた。


「今日は徹底的にやらせて貰うから。てか、あんたの将来かかってるんだし、この際妙なプライドは捨てて貰うからね」


そう自信満々に豪語する親友は、マネージャーの様に手帳を開き、足早に次々と目的地に歩き出す。コンタクトを作り、行った事もないヘアサロンへ足を踏み入れた。

黒と赤を基調としたスタイリッシュな店内。そして暗めの照明の中、カット台にスポットライトが徒然と射されていて、軽快な洋楽が流れていた。
まるで舞台のメイク室にいるかの様な感覚で、私はぎこちなく通された椅子に腰掛けた。

ああ、違和感ありまくりだ。

てか、落ち着かない。



「初めてですよね?今日はどうなさいますか?」

「え、えっと……」

「ああ、ハルさん、この子全くの初めてなの。こんな感じでやって貰えるかな?似合うと思うんだよね」

梨花は、慣れた様子でスタッフさんに紙を渡した。



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