竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

――――……


そろそろ『Mistletoe』を手伝ってはどうかと言われたのは、それから数日後の夕食の席だった。



「――え?」



思わず耳を疑うエリ。



「え、じゃないよ」

「――えっと……」



隣でニコニコと楽しげに笑っている花沙の視線を受け、凍り付く。


今日のメニューはビーフシチューで、パンまで月翔の手作りだった。

ああ、おいしかった……。

と紅茶を飲みながら余韻に浸っていると、花沙に「そろそろミスルトウ手伝おうか」と言われたのだ。


提案の主は花沙だったが、雪光にも話が通っていたのか、無言でうなずく。

月翔にいたっては『働かざる者食うべからず』の精神で「こき使ってあげます」と微笑む始末。



「ちょっとそんな勝手に決めないでよ!」



いやだいやだ。店なんか手伝いたくない!

月翔にこき使われるのもまっぴらごめんだー!



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