竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
電車の時間もあるし、戻るのは少し面倒だったが、さすがに時計はないと困ると、エリは仕方なく来た道を駆け足で戻った。
ドアは開けっぱなしで鍵はかかっていなかった。
自分が出て行ったら、締めろといつも言っているのに……。
そう思いつつドアノブを回すと、部屋の中から笑い声が聞こえた。
ゆっくりとノブを引く。中を覗き込むと、ベッドの上で寝転がったまま、裸のマー君が電話をしているところだった。
こちらに背中を向けていて、どうやらエリには気づいていないようだ。
「――だからさ、なんか、棒っきれ抱いてるみたいっていうかねージョウチョがねーっていうかさぁ!」
顔からスーッと血の気が引く。
「えー男?みたいなさ。アレがないだけでさ……とりあえず穴があるから入れとけみたいなね、ハハッ!」
自分とのセックスが笑い話になっていると気づくのに、それほど時間はかからなかった。
エリは靴を脱ぎ、部屋に入る。
小さなテーブルの上に置いたままの時計を手に取り、なんとか腕にはめた。