竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「情緒がなくて悪かったわね」
「ッ――うわああっ!?」
マー君が驚いたように振り返り、そのままの勢いで、ベッドから転がり落ちた。
彼の手から滑り落ちたスマホを拾い上げる。
「あ、なんで、あ、ちが、違う、エリコちゃん、違うって!」
慌てたように奪われた着信画面には『取引先』と記載されていた。
「取引先?」
ふっと鼻で笑うエリ。
いったいどこの取引先だよ!
何を取引してるんだよ、もっとひねろよ!
「――ばいばい」
あわあわしているマー君にスマホを返し、エリは唇を引き結ぶ。
本当は、脱力して、この場に倒れそうだったが、それだけは気力でカバーした。