竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
部屋を飛び出し、階段を駆け下り、うす暗い夕暮れのアスファルトを全力疾走しながら、エリは泣いていた。
バカらしいと思いつつも、やはり悲しかった。
情緒がない。男みたい。そんなこと言われなくてもわかってる。
だけどそんなことを聞きたくはなかった。耳に入れたくなかった。
自分の悪口なんて、知らなければそれは自分にとって「ないもの」だから、傷ついたりしないで済んだのに。
知れば向き合わなければいけない。
どうしようもない現実と……!
『男みたい。女らしくない』
振り切りたくても振り切れない。
彼の言うことももっともだと思う自分もいて、それがまた悔しい。
私が女らしかったら、なんて、私が一番思ってるよ!
「マー君の馬鹿! 情緒って漢字で書けないくせに!!!」
大声で叫びながら、エリはさらに、全力疾走する足に力を込めた。