竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
それに、自分でこんなことをいうと切ないけれど、彼と別れたら新しい男なんて出来る気がしなかった。
25歳。非正規雇用。美人でもない。可愛げもない。おまけに背も高い。
こんな私、男の人に好きになってもらえる気がしない……。
「私だって、マー君以上に意気地なしだ……」
ぽつりとつぶやいて、半泣きになりながら携帯をバッグに押し込んだ。
――――……
母、桜子が帰ってきたのは、それから三時間ほど経って、すっかりあたりが暗くなってからだった。
「遅かったね」
リビングのソファーでテレビを見ていたエリは、起き上がって母を出迎える。ふと時計を見上げてみれば、もう21時前だった。
「ごめんね。色々仕事が山積みで。ごはん食べた?」
桜子はいそいそと玄関からダイニングへと足を踏み入れ、テーブルの上の料理を見て目を丸くする。