竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
そのことを、昨晩親友であるトモコに相談すると
「あー、それお母さん、恋だよ!」
と、テンション高く指摘されて、深夜のファミレスで飛び上がりそうになったのだ。
「お、お母さんが、恋!?」
「だって、おばさん美人じゃない~。美人音楽教師って感じだもん」
「でも、お母さんだよ!?」
娘にとって、母、桜子は母親であって女ではない。
恋をしていると言われて、すぐにはいそうですかと納得できるはずがない。
「でも……」
エリはうろうろとテーブルの上に視線を彷徨わせ、それからメロンソーダのストローにかぶりつく。
「おばさん、いくつよ」
「えーっと……私を二十歳で産んだから、46歳、かな?」
「見えないよ~。ほんっ……とに、綺麗だよ。エリはあんまり似てないけど」
「ほっとけ……」
エリはストローをガジガジとかんで、ため息をつく。
恋……か。
確かにエリの母は、凛とした佇まいを持った美しい人だ。
髪は黒く美しく肌の色は抜けるように白い。