竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
桜子は小さいころから自慢の母だった。
自分も成長すれば母のようになれると信じていた。
なよたけのかぐや姫のような、女性に――
けれど、私はちっともお母さんに似ていない。
たとえば外見。身長はなんと168センチ。ヒールを履けば余裕で170センチオーバー。
凹凸のない体(ようするにまな板ってやつ)
髪はくるくるの巻き毛で、目の色も薄い。
色は母によく似て白いけれど、頬にはかすかにそばかすが浮いている始末。
大好きな母に似なかったことが悔しくて、思春期には何度も枕を涙で濡らしたものだ。
内面だって、社交的な彼女とは似ても似つかない、うじうじ系だ。
「おばさんにもおばさんの人生があるよ、エリ」
「わかってる……わかってるけど……」
トモコの言葉はもっともだった。
あんなに美しい母だから、きっと今までだってモテていたに違いないのだ。
けれど母から男の匂いはしたことがない。今まで一度だって。
一人娘の私はとうに成人しているのだし(生活は不安定だけれど)、母は母の人生を満喫していいはずなのだ。
そう、わかってはいるけれど――
だけどやっぱり、すぐには受け入れられない。
私にはお母さんしかいないのに……。