竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
これで試験は終了だろうか。とりあえず『可』は貰えたと思ってもいいのかな。
だけどこういう抜き打ちの接客試験をするならするって、事前に言ってもらいたかったよ……。
たまたま雑学として頭にあったからいいようなものの(あの人から得た知識というのは癪に障るが)これがまったく違う分野だったら、絶対に不合格だった、私……。
エリは内心ほっとしつつ、頭を下げたのだが――
男はこれからが本番だと言わんばかりに、エリを厳しい目で見下ろした。
「では、私と一緒に来てもらおうか」
「――はい?」
顔をあげ首をかしげるエリ。
「どこに、で、ございますか……?」
「テーラー『Mistletoe』」
男は中指でメタルフレームを押し上げると、その手でエリの手首をつかみ、引き寄せた。