竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

「――来てもらうと言っただろう」



最後、助手席から出てきたのは、エリをテストした男が、苦虫をかみつぶしたような不機嫌さでもってエリを見下ろしていた。



「な、な、なんですか!?」



なんか、おかしいよね。これ……。

人事とか、テストとか、お母さんのこととか、わけわかんないよ。

いったいどうなってるの!?



全身から汗が噴き出す。

ジリジリと後ずさろうとすると、カズサがエリの隣にまわりこみ肩を抱いた。



「大人しく来てもらうよ」



低い声で耳元でささやかれて、背筋がぞくりと震える。



「やっ、嘘、やだ、誘拐!」

「何を言ってるんだか。さ、帰ろうか!」

「か、帰る!?」



< 59 / 120 >

この作品をシェア

pagetop