竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
イケメンスーツ三人は、人ごみに紛れていても、目を見張るような存在感を放っている。
そう。『正しくスーツを着た男』というものは、不思議と周囲に畏敬の念を抱かせるものなのだ。
目を見張るエリに、今度はツキトが笑顔で微笑みかけた。
「迎えに来ただけですよ」
「頼んでませんけど!」
「いいんですよ、遠慮なさらなくても」
「してません!」
「――はぁ、ウルサイ小娘だ……。あんまりうるさいと、少々乱暴な手段に出ますよ」
「はぁ!?」
「――ツキト」
それまで口数が少なかった試験男が、エリの前に立ちふさがる。
「逃げても無駄だ」
「っ……」
鋭い眼差しはまるで稲妻のように光り、エリの体を硬直させた。
人はたくさんいるというのに、誰一人彼らに不審な目を向けない。むしろいい男に取り囲まれているエリを、羨望の眼差しで見る女性もいるくらいで――
結局エリは、車の中に押し込められてしまっていた。