竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
テーラー「Mistletoe」
そしてエリがスーツの男たちに拉致された先は――
なんてことないビジネスビルだった。
壁には植物のつたがはい、入口には青天目ビルヂングと書いてあり、一階からずっと上のほうまで、いろんな会社が入っていて、てっきりヤクザにでも売られるのかとビビっていたエリは、拍子抜けしてしまった。
しかも三兄弟ったら「こんにちは」なんて、普通にビルの中で挨拶してるし……。
エレベーターに乗り込み、降りたのは十一階。
目の前には廊下と、いくつものドア。
そのうちの一つの前に四人で立つ。
「――ここ、なんですか……」
「テーラー『Mistletoe』」
試験男が、ポケットからまるで懐中時計でも出すかのように鍵を取りだし、ドアノブに差し込む。
「テーラー、ミスルトウ……テーラー……?」
テーラーって、あれよね。お仕立ての服を作る店のことでしょ?