竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
エリはどうにも毒舌で、エリに対し一番あたりが強いツキトが見えなくなったことで、このまま走って逃げだしたい気分になったが、入口にカズサが腕を組んで立っているのに気付き、仕方なくソファーの端にちんまりと腰を下ろした。
「あの……私の店って、どういうことですか……」
「その言葉の通りだ」
試験男はため息をつきつつ、エリの真向かいに腰を下ろす。
恐ろしく長い脚を組み、こめかみのあたりを指で押さえた。
「この店の所有権はあんたにある」
「――あの、待ってください。何かの間違いだと思います。だって私、普通の25歳で、そんなテーラーなんて、貰うような……」
言いかけて、口が重くなった。
まさか――
まさか。
心臓がドクドクと鼓動を早める。
「あの……」
振り絞った声はかすれていた。