竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「死んだんだよ」
え、なに?
死んだ?
ポカン、とした表情のエリに、猫のような、どこか無垢で残酷な瞳で、カズサは告げる。
「カズサ、待て。順番に――」
「ユキ兄は黙ってなよ。はっきり言わないからわかんないんだよ、こいつ」
そしてカズサは、両手をポケットに入れてにっこりと微笑んだ。
「伝説のテーラーが、死んだんだ。この店をたった一人の娘、エリィに遺してね」
死んだ。あの人が、死んだ……?
酷いショックを受けているにも関わらず実感がわかない。
「で、師匠は俺たちに言ったわけ。店が欲しかったら、エリィと結婚するしかないなって。で、俺たちはこの数か月、ずっとあんたを探してたってこと」
嘘でしょ……。
死んだなんて。
嘘だ……。
その瞬間、まるで幕が下りたかのように、目の前が真っ暗になった。