竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「エリィ!」
あの人が大きな声で私を呼んでいる。
私の名前は本当はエリコなのに、エリィってほんの少しだけ舌足らずに呼ぶ。
「ぱぱぁ!」
彼は、私が駆け寄ると、腕の下に手を入れて、頭の上まで持ち上げてくれる。
そして、きゃーきゃーとはしゃぐ私を見て、嬉しそうに笑うの。
「エリィ、大好きだよ。お前は俺の宝物だよ」って。
私も、そんな風に呼ばれるのが大好きで……
まるで外国のお姫様みたいに扱ってくれるあの人のことが大好きだった。
本当に大好きだった。
たまにしか会えないけど、エリィは優しいパパが大好きだった。