竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
だけどパパはうそをついた……
宝物なら、どうしてエリィを手放したの……?
優しかったあの人は、あの日を境に、来なくなった。
満開の桜の季節に、私とお母さんの前から、永遠に姿を消した。
お母さんはたくさん泣いて、泣いて、しおれるほど泣いて
そして私に「二人で生きていこう」って言ったんだ。
私の人生からお父さんはいなくなった。
それなのに……
今さら死んだなんて聞かされて、どうしたらいいの。
―――……
「ぱ、ぱ……」
エリの目じりから溢れた涙が、こめかみをつたって、巻き毛の中に流れる。