竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「――パパ、だって……」
ソファーを上から覗き込んでいたカズサが、気まずそうにため息をついた。
「これで満足しましたか? 花沙(カズサ)」
ソファーに座った月翔(ツキト)は、優雅に紅茶を飲みながら目を細める。
「とりあえずお前が選ばれることはないでしょう。それは確実です。フフッ……よかったですね」
「よくないよ、うるさいよ……」
花沙はハアッと大きなため息を連続でついたあと、着ていた上衣を脱いでエリの体の上にかける。
「おや、そんなことで今更点数を稼ごうったって、無駄なんじゃないんですか?」
「違うって。そういうんじゃねえし……」
普段から毒を吐いてばかりの月翔だ。自分をからかっているのはわかっていたが、そうでもしないと気まずくて仕方なかったのだ。