竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
大きな手だった。
彼のほうが年下なのに、一瞬父親の手を思い出して、なんだかムズムズしてしまう。
「ちょっと、私のが年上なんだから子ども扱いしないでよね」
「子ども扱いしないでって言う台詞、とても年上だとは思えないけど?」
花沙はもっともらしく、ククッと肩を揺らすように笑い、そのままひらりと手を振って、その場を離れ階下へと降りて行った。
なんていうか……年下なのに、すごい余裕。
いったいどういう風に育ってきたんだろう。
っていうか、彼らの両親って今どこで何してるわけ?
自分の息子たちが、店欲しさに私を取り合う(月翔が聞けばまゆを顰めそうだが、便宜上そういうことにしておく)なんてどうして許すんだろう?
そんな素朴な疑問を抱いたエリだったが、それを三兄弟の誰かに尋ねるのは気が引けた。
そもそも、あっさり近くに住んでると言われるにしても、すでに他界しているといわれるにしても、エリには関係のないこと。
興味があるとは思われたくなかったし、あくまでも自分はこのバカげた婚約者ごっこに加担するつもりはないのだから。