竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
翌朝、兄弟がそろった朝食の席で、花沙が「俺が一歩リードしたって感じ」とのたまって、エリは紅茶を噴き出しそうになった。
「ちょっと……」
隣に座っている花沙の腕を押すエリ。
テーブルの向こうには、相変わらず苦虫をかみつぶしたような不機嫌か、この世になんの興味ももっていないとい言わんばかりの無表情がデフォルトらしい雪光と、月翔が紅茶を飲んでいる。
「兄貴たちがなに考えてるか知らないけど、俺がぜったいエリをものにするからね」
「ちょっと、花沙っ……」
モノにすると言われているのは正確には私ではなく「Mistletoe」なのだろうが、それでも普通に恥ずかしいのだ。
「――花沙」
月翔が実に美しい、はなやいだ笑顔を浮かべつつ、カップをソーサーの上に置く。
「なにをそんなにムキになっているんです」
そしてエリを見て、鼻でフッとせせら笑う月翔。
まるで『大した女じゃないでしょう』といわんばかりの視線だ。