SHIMAUMA

バスの中で沈黙が続く。

数分前、バスは沖浜のバス停に止まって

若者のカップルを乗せた。


今日は手袋を忘れたから、

指先が冷え切っている。


私はマフラーを口元から下げて、

男の方を向く。

男は眠そうな目をして、

どこか遠くを見つめていた。


「・・・シマウマちゃんとは、
 他にどんなことをして遊んだんですか?」


「・・・あ、うん。そうだねぇ、
 よくゲージから出して遊んだよ。
 出せぇー!ってゲージを噛むんだよ、
 ガタガタって揺らすんだ」


男はまた楽しそうに話し始めた。


「なんか、可愛いですね。」


「・・・そうだね。
 可愛かったなぁ、思い出すよ」


男は目を閉じて、

懐かしそうに話した。


私も、小さい頃を思い出した。

よく外で遊んだもんだ、しかも一人で。


小さい頃から私は、

友達がいた記憶がない。

それでも毎日楽しく遊んだのは覚えている。

知らない場所へ行くのが好きで、

疲れて眠くなるまで遊んだ。


・・・というか、

私からは話しかけないって決めたのに

あっさり話しかけてしまった。


まぁ・・・

そんなことどうでもいいか、

馬鹿らしい。


それよりも、今の私は

何故だかシマウマちゃんに興味深々だった。






 





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