Vampire's Moral





助かった人、辛いだろうね、と呟くDesire。


擦り傷とかは大量に作ったようだし、下野だって無事って訳じゃないと思う。

しかも、下野の心情なんて、俺には全く関係が無い。
俺が知るべきなのは、下野がどうしたいのかだけだ。

だって俺には関係が無い。
下野と上野さんが、どんな選択をしても。

興味だって無いし、依頼人の事情にそこまで突っ込む必要だって無い。



「……たぶん、人が一人死ぬくらいの血を報酬として戴けるなら、俺にも上野さんの意識を戻す事は出来ると思うんだよね」



下野達に同情しながら漫画を読むという、なかなか器用なDesireに聞かせるつもりも無く、俺は小さく呟く。

しかし今考えると、その呟きは全ての墓穴に繋がった。
吸血鬼が“墓穴”なんて矛盾した言葉、言って良いかは知らないけど。


「じゃあ、片方を助ければ、もう片方は必ず辛い想いをするって事?」





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