Vampire's Moral





Desireの口調が、さっきより少しだけ強くなった気がした。
その変化をスルーして、俺は依頼を自慢するかように続ける。


「そうだね。下野が自分の命を尊重すれば、上野さんの意識は戻る事無く、遠くない将来にたぶん死ぬ。俺が上野さんの意識を戻して、下野が俺に報酬を払えば、下野は出血多量で命を落とすんじゃないかな」




どっちを選ぼうと、俺には関係無い。
俺の飲める血の量が変わるだけだ。


むしろ俺にとって、こんなに大量の血を一度に飲んだ経験は、さすがに無くて。
しかも人間界で生活するなら、こんな機会は二度と無いかもしれなくて。

そんなチャンスに、俺は期待と興奮だらけだった。



「……そんなの有り得ない! そんな未来ならいらない!!」



Desireが急に大声を出したので、俺は驚きすぎて思わず漫画を落としてしまった。


「…Desire、どうしたんだ? 人間が一人くらい、泣いても死んでも、吸血鬼には関係無いだろ。何、熱くなっちゃってんの?」





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