Vampire's Moral





「…江梨子と手を繋いでも、良い?」

「あぁ!?」


何でだよ? 早くして欲しい。


「……最期くらいは、江梨子と手ぇ繋いでたい」

「…勝手にしろ」


そんなの、吸血の邪魔にも、何にもならねぇよ。

下野は満足したのか、思い残す事が無いように、幸せそうな笑顔で、右手で上野さんの手を握った。 


俺は下野の左手首から、血を摂取し始めた。

クタクタになった俺の体に血という栄養が漲り、体が楽になると同時に、凄く気持ち良くなっていった。



「江梨子……。俺の分まで、絶対に幸せになれよ」



下野の呟きなんて、どうだって良い。





さて、吸血鬼は血を摂取すると、恍惚状態になる種族だ。
それは“先祖帰り”と言われる俺は、特にその傾向が強い。


こんなに大量の血を一度に摂取出来るなんて、後にも先にも二度と無いと思う。
しかも俺はその時、吸血鬼の力を使いすぎて、クタクタになっていた。





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