Vampire's Moral





…………だから忘れていたんだ。
怪力なのは流血だけじゃなくて、吸血鬼という種族そのものが怪力だって事を。





「……ざっけんなああぁぁぁ!!」



女の叫びと共に俺はぶっ飛ばされ、丸椅子から転がり落ちた。
床に打った箇所をさすりながら見ると、Desireが椿の葉を下野の左手首にあてて、包帯をクルクルと巻いていた。


…Desire、いつ病室に入ってきたんだ?
全然気付かなかったぞ。

…って、そんな事より!


「何すんだよDesire! 俺の血を、報酬をどうしてくれんだよ!」

「Bloodyは勝手にほざいててよ。片方しか助からないのを見捨てるなんて、そんなの出来ないよ! 遺された方は凄く悲しいんだから!」

「だからって、俺の血は!? 俺だって上野さんに力を使いすぎて、疲れきってんだよ」

「黙りな」




そう言ったDesireは、俺に900グラムのトマトジュースのペットボトルを投げてよこした。





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