Vampire's Moral





「マジか! おめでとう、江梨子!!」

「ありがとう、トシ。退院したら遊びに行こうね」


トシの笑顔が固まり、能登君が顔をしかめる。
でも、それくらいの反応なら、最初から覚悟出来てる。


「……俺、この目じゃ、何処にも出かけられないよ。映画館とか図書館とか、絶対に無理だし」

「大丈夫だよ、トシ! 絶対にトシも楽しめる場所に行くし、二人で行けば楽しいよ! 私がトシを連れてったげる!」



トシがふんわりと微笑み、確実に私を見た。
私が映るトシの目は虚ろだけど、それでもトシは私を見てくれてる。


「……そうだよな。二人で行けば楽しいよな」

「うん! 絶対に楽しいよ!」

「……あ~俺、やっぱ邪魔だったみたいだわ。ちょっと飲み物買ってくる」


能登君が苦笑して、病室を出て行った。
病室が静かになる。

私は気になって、トシに聞いてみる事にした。





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