Vampire's Moral
「…ねぇトシ、どれくらい見えてないの?」
「全く見えてない」
「全く!?」
本当に何も見えてないの?
私が想像してたより、トシの目は酷い状態みたい。
私はトシの目の前に、自分の手を出してみた。
「…じゃあ、コレ見える? 触れる?」
「えっと……」
トシは手をゆっくりと大きく振ってみるが、私の手に触れそうで触れない。
本当に見えないんだ……。
「…もう良いよ、トシ。ごめんね」
「……いや、俺の方こそゴメン」
そんな。
トシが謝る事は、全く無いのに。
だってトシは悪くない。
運が悪く、交通事故に遭っただけ。
……じゃあ、本気で考えなきゃ。
私とトシが、一緒に楽しめる場所。
いや、むしろトシが何処に行きたいかだよね。
図書館も満喫も博物館も遊園地も、目が見えないんじゃ面白くないし…。
「トシは、遊びに行くなら、何処が良い?」
「江梨子と?」
「うん」
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